みさなんこんにちは。
今回は「インシデント報告は犯人さがし?」というテーマでお話していきます。
犯人さがしなんて、怪談話級に恐ろしいですね・・・・。
みなさんの職場には、犯人さがしをする雰囲気はありますか?
1.そもそもインシデント報告とは?
①事故の再発防止や改善に向けた情報収集ツールとしての役割,②施設内で患者に発生した有害事象を早期に把握する役割,③組織内の安全文化を強固なものとする役割 とされています。
(病院 73巻 11号 特集 これからの医療安全を考えるインシデントレポートを通した医療安全文化の醸成)
つまり、インシデント報告は今ある問題を表沙汰にすること、つまり、「病院に対して問題提起すること」なのです。
ここでみなさんの中には、「こんなミス自分(またはあの人)しかしないよ」「怠け者だからだ」「恥ずかしい」などと考える方もいると思います。
いくら医療安全学習会の冒頭で、「人間はかならず間違うものです」なんて言われたとしても、現場の雰囲気がそれを許さなければ、隠したくなったり恥だと感じたりして、何度も落ち込むことはあると思います。
人は失敗を隠す。他人から自分を守るばかりでなく、自分自身からも守るために。
マシュー・サイド. 失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織 (p.20). 株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン. Kindle 版.
失敗を恥ずかしいと思ったり、隠したくなったりするのは、もはや自分を守るための防衛本能なのです。そのように考える自分を悔いたり恥じたりするのは無駄なんですね。
確かに看護師の仕事には患者の命と直結していて、絶対に許されない間違いもあります。患者本人や患者家族の不利益の度合いによっては、間違いを償いきれないこともあるでしょう。
そんな中で「人間は必ず間違うものです」などと言われたとしても、「そうは言っても間違いが許されないのが医療界だ」と感じてしまうのも無理のない話です。
人一倍責任感が強い人であれば、だれかが「仕方ないよ」「大丈夫だよ」と言葉をかけてくれたとしても、自分を許すことができず、看護師を辞めるという選択をする人がいてもおかしくありません。
しかし、臭い物に蓋をするだけでは根本的な原因は解決しません。
そんな時に、病院という組織で問題を共有し、解決していくために行動することが必要となります。
どうしたらのような考え方にシフトできるか?
それは1人1人がインシデントというものに対して、考え方を変えるしかありません。
2.インシデントを報告をする方法は?
報告をする時には、インシデントレポートと呼ばれるものを提出するのが一般的です。
記載する型が決まっていて、次でお話するインシデント分析を行う時に、第3者がその場の状況を想像できるように、客観的に事実をカテゴリ別で記録していく必要があります。
病院によって①レポートの定型文がExcelなどで作成されている ②医療安全管理者システムと呼ばれる外部のサービスを導入している などが考えられますが、いずれにしても目的は同じになります。
これを提出する目的は、 インシデントによって示された 問題からシステムの弱点を探すことです。
つまり、単に犯人さがしをして「次からは気をつけなさい」と注意をする場ではないということですね!
インシデント報告とは、所属する組織の問題提起するものであり、問題の共有→解決というサイクルを循環させる重要なきっかけである。
3.報告されたインシデントはどうなるの?
報告されたインシデントは、インシデント分析を行います。
分析は、細かく分類したものをまたもとに戻すことができることが前提に成り立っています。
つまりインシデント分析とは、報告されたインシデントを基になぜ起こってしまったのか、原因と思われる事柄を挙げ、カテゴリごとに分類し、それぞれに対しての対策を立てることです。
報告されたインシデントは、まずインシデントが起きた職場内で分析することになります。
インシデント分析に関しては、1人で行うことは多角的に物事を捉えることができないためおすすめできませんし、1職種だけで検討することも、意見に幅が生まれないため効果的とは言えません。
しかしながら、分析には時間がかかるため、全ての事例において多職種で検討することは不可能でしょう。
各職場に配置されている医療安全委員会メンバーや職責者が中心となり、分析・検討されたインシデントの中から、重大な事故に直結する可能性があったり、緊急に対応を要したりするものを選び、それに対して多職種で分析するという流れが一般的です。
4.具体的なインシデント分析の方法とは
インシデント分析の方法としては、現在のところ以下のようになります。
これは今現在の分析方法の紹介であり、今後も様々な方法が開発されていくでしょう。
みなさんの職場で活用されている方法はどの方法ですか?
1.なぜなぜ分析
2.SHELモデル
3.4M-4Eマトリクス表
4.RCA
5.VTA
6.FMEA(事前介入型の方法)
今回の投稿では1つ1つの方法の詳細・実施方法などについては行わず、別の投稿を作成しますのでそちらをご参照ください。
おわりに
いかがでしたか?
インシデント報告は単なる犯人さがしではないということをお話しました。
それどころか、「システムのあらを見つけ弱点を克服するための手段を考えることができる、素晴らしいきっかけ」という認識を1人1人が持つことで、それぞれのインシデントを自分事のように捉えることができます。
インシデントを分析する方法は様々ありますが、まずは認識を変えるところから始めていきましょう。
看護師人生はたくさんの経験をもたらしてくれますが、個人レベルでは気づけないこと、遭遇できないことはたくさんあります。
認識が変わると、これまでには見えてこなかった視点での気づきが生まれます。
そんな気づきの連鎖を1巻き起こして、私たち看護師がより安全に看護に従事できる未来を、他の誰でもなく私たち自身が創っていきましょう。
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