みなさんこんにちは。
今回は看護基準・業務基準についてのお話をしていきたいと思います。
現在みなさんの勤めている施設では、看護基準や業務基準はどのように作成されているでしょうか。
基本的にはガイドラインに沿って作成されたり、ガイドラインを基に施設独自のルールを設けることもあるでしょう。
新人看護師であれば、看護基準・手順書を基に研修を受け、手技やルールが定着するまではそれを基に実施していくため、非常になじみがあるものと言えます。
しかし業務に慣れてくると、基準を見ながら実施する人は少ないはず。
いつしかマイルールを取り入れて各施設の基準から逸脱した方法が、自施設のルールだという認識にすり替わり、指導を受ける側としては人によって実施方法が異なることに戸惑いを覚えることになります。
なぜこのような現象が起きてしまうのか考えていきましょう。
なぜマイルールで仕事をしてしまう?
1.院内の基準自体が古いままになっている
みなさんの施設には、10年以上全く改定も確認もされていないような看護基準や業務基準は存在していませんか?
月1回程度開催されているような看護基準・手順委員会を設置している病院が多いと思われますが、基準や手順はかなり膨大なものであり、各施設で計画的に見直しを図っていかない限り、ほとんど改善がなされず放置されているものも存在します。
そもそも存在していることさえ認知されていないような基準さえあるのが現状です。
そんな時に、古い基準がその施設としては採用されていたとしても、明らかにそのやり方は現状にそぐわない方法だったり、やりにくい・手間・時間だけがかかるようなもののままだったとしたら、あなたはその方法に従いますか?
誰かに見られているときにはせめて取り繕ったとしても、自分1人で作業しているのなら自分のやり方ばかりで行うなんてことになるんじゃないでしょうか。
そこで自分のやり方でインシデントにつながろうものなら、非難轟々。インシデント分析では「手順の徹底」が叫ばれそうですね。
2.改善への過程が遅い
前述したように、自施設の基準が古い場合は定期的に変更したり、改善したりする必要があります。
例えば委員会メンバーそれぞれに仕事が割り振られていたとして、期限までに実施できる人はどれくらいいるでしょうか。
また、期限までに変更・改善ができたとして、それが委員会内の承認→看護部内での承認→病院全体での承認などを定期的に定められた会議の場で発表し、1つ1つに承認を受けるという作業が発生します。
このサイクルのどこかでつまずいてしまうと、その変更・改善自体がなかったことになったり、次回の会議まで承認してもらう期間が延期してしまうことで、結局変更するまでに半年以上かかるなんてこともあるのではないでしょうか。
変化を嫌う風土が強い職場であれば、特に内容を変更するということに抵抗を示される場合もあります。
それでも次々に変更や改善をしなければならない事案は迫ってくるが、一向に進まないことでごっそりやる気を削られてしまうという負のスパイラルに陥ってしまうのです。
結局いつまでも基準の改定がないため、マイルールを多用する人が現れます。
3.看護基準・業務基準の内容が分かりづらい
日本語の文章はいろいろな解釈をすることができ、文章だけではわかりづらいこともあります。
理解するには読解力が必要になりますが、それは前提として文章が適切であることが必要です。
100人のスタッフがいたら、100通りに解釈されないための文章が必要となります。
どんなに素晴らしい文章だったとしても、時代の変化とともに言い回しなど分かりづらさは出てきます。
看護基準・業務基準が非常に難しい文章だったとして、それは誰のためのものなのでしょう?
新人が見てできるものでなければいけないなら、新人が読んでわかりやすい文章にしなければならないはずです。
異動者が見てできるものでなければいけないなら、異動者が見てできるものでなければならないです。
いずれにしてもベテランだけが読んで理解するためものではありません。
誰のためにどうしてほしくて書いているものなのか、改めて目的を意識した文章や内容を心がける必要があります。
解決できる方法は?
マイルールで仕事をしないためにする方法の一つとして、異業種である無印良品の考え方を挙げてみます。
無印良品は「MUJIGRAM」と呼ばれるマニュアルを作成していることで有名です。
無印良品の店舗が全国にあったとしても、そのMUJIGRAMを基に店舗づくり・接客・陳列・発注など行っていくことで、個人差・地域差がなく働くことができるため欠かせないアイテムとなっているようです。
こちらは2000ページにも及ぶもので、中にはイラスト・図・写真などがふんだんに使用され、誰が見ても取り組めるように作られています。
1.MUJIGRAMは日々進化し続ける
無印良品のマニュアルは、現場で働くスタッフたちが「こうしたほうが、いいのに」と感じたことを、積み重ねることで生まれた知恵です。また、現場では毎日のように問題点や改善点が発見され、マニュアルは毎月、更新されていくのです。仕事の進め方がどんどんブラッシュアップされるし、自然と、改善点がないかを探しながら働けるようにもなります。
松井忠三.無印良品は、仕組みが9割 仕事はシンプルにやりなさい(p25),2013年7月,株式会社KADOKAWA.
私たち看護師は、看護基準・手順書を作成する際に「こうしたほうがいいのに」とすることはなかなかできません。
ガイドラインは「これが最も安全で正しい方法」とされて、歴史を経てエビデンスが確立された内容を基に作成されてきたものであり、それを大きく逸脱した内容にすることはできないからです。
しかし、記載の仕方・文章の書き方についてはその都度変更することはできるはずです。
また、ガイドラインが存在するような手技に関して上記のように記載しましたが、ダブルチェックのように様々な解釈ができるような確認方法についてなど、その語句の意味を詳細に提示しなければならないものも存在します。
例えばダブルチェックがすり抜けたインシデントが発生したとします。なぜダブルチェックがすり抜けたのでしょう?
それはダブルチェックが有効に機能しないような実施方法だった可能性があります。
そんな時に、ダブルチェックの方法が明示されていなければ、今後も同じインシデントを繰り返し起こす可能性が高いです。
誰が見ても、違う解釈にならないように文章を作成することは非常に難しいでしょう。
それを5年~10年に1度しか改定しないというのは、よほど完璧な文章なのか、あるいは文章が分かりづらくても改善が必要だと声を上げることができない風土なのかと感じます。
無印良品のように、現場の「こうしたほうがいいのに」を集め、改善点を探しながら働けるようになったら働きやすいと感じるスタッフが増える可能性があるし、そういった姿勢を評価してくれる風土があれば、改善のサイクルもどんどん加速していくことは間違いないでしょう。
2.血の通ったマニュアルにする
血の通ったマニュアルとは、すわなわち徹底して使われ改善され続けるマニュアルのことを指します。
「このマニュアル通りに行えなければ、無印良品とは言えない」、そんなマニュアルです。
自分の勤めている施設を例にとって考えてみてください。
あなたは、施設の基準をどのような気持ちで守っていますか?
「良くわからないけどこの施設ではこう言ってるから」「これまでの伝統としてこれが普通だったから」「施設の偉い人たちが考えたものだから従わなければならない」など理由は様々考えられます。
そもそもどんな気持ちで守っているか考えたこともないかもしれません。
このような思考では、現場の「もっとこうしたらいいのに」を取り入れる気持ちにもなりませんし、取り入れることができるという発想すら生まれてこないでしょう。
上司の言いなりにただ動いているだけでは何も変わらないし、上司は現場レベルの意見をすべて把握することはできません。
実際に血を通わせることができるかどうかは、それぞれのスタッフにかかっています。
なぜなら、そのマニュアルを普段から使っているのは現場のスタッフだからです。
自分たちの手で作り上げていこうという意識があるか、言われるままのはたらき蟻になるかという意識一つで、改善したい・マニュアルを大切にしたいという意識は大きく変わってきます。
そこには職場の風土が大きく関係することは間違いありませんが、スタッフ一人一人が意識を高く持つということはすぐにできることです。
組織が変わるには、まずは個人個人が変わる必要があります。
個人が思っている「もっとこうしたらいいのに」を集めたら、いろんな意見を合わせた集大成の「もっとこうしたらいいのに」を抽出することができます。
マニュアルを変えたからと言って、全てが最初からうまくいくわけではないし、何度も改善する手間は発生します。
しかしながらその手間がなければ、一生血の通わないマニュアルと付き合い続けなければなりません。
マニュアルを作ることは、個人の思考停止を生むというような発言をする人もいますが、作りっぱなしではいられないので、むしろ個人個人が試行し続けなければ生み出すことができないものです。
あなたは言われたことだけやる人間になりたいですか?それとも自ら進んで参加し作り上げていく人間になりたいですか?
まとめ
いかがでしたか?
看護師だからと言って、看護師業界のことだけを学び続けるのはナンセンスです。
医療界のこれまでの安全を考えても、医療界だけで生み出されたものはそうありません。
航空産業・製造業・戦争など様々なことから転用されて生み出された安全のための考え方がほとんどです。
日々安全に看護を提供するための仕組みを、他の職種からなにか真似ができないか探す視点を持ち続けていたいですね。
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